「何を弾くか」を考える力を育てる 〜中学生の夕暮れのレッスン〜

2025年11月23日 12:02
カテゴリ: レッスン日記

中学生のレッスン。
今回取り組んでいるのは、「ある夕暮れ」を題名にもつ曲です。
ABABAの形。
最後のAは、コーダ。
音の流れの中に「一日が終わっていく時間」が描かれているような曲です。

 
レッスンでは、まず楽譜の中に描かれた“場面”を一つずつ話し合いました。
生徒さんが言葉で描いた情景が、とてもすてきでした。
 
 
 
明るいオレンジの夕日。
まだ少し青空も見える。
小学生の声や、工場の機械の音が聞こえてくる。
 
やがて、夕日は沈み、黒の暗さがやってくる。
外から聞こえていた声は、家の中から聞こえるように変わり、
家のあちこちに灯りがともる。
 
 
妹と笑いながらじゃれ合う夜。
笑い声が部屋に響く。
そして「おやすみ」と部屋を出たあと、急に訪れる静けさ。
聞こえてくるのは、シャーペンの音、家族の足音、
そして、眠りについた妹の寝息・・・
 
 
勉強しながら、何度かうとうとしてしまう夜。
その瞬間にふと感じる、時間の流れのゆっくりさ。
あんなに早く過ぎてしまう日中とは違う、夜の時間の流れ。

そのすべてを、音で感じ取りながら弾く。
「何が弾けるか」ではなく、
「何を弾くのか」。
自分の生活の中にある“時間のうつろい”を音にすることが、
この曲の本当の魅力を引き出すカギになります。
 
 
ピアノは、ただ指を動かすだけのものではありません。
日常の中で感じている音・光・静けさを、
“自分の音”として表現する力を育てるレッスンです。
「感じて、音にする」・・・
それが中学生の今だからこそ、心に残る経験になります。

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